丸山工作先生の思いで

 

私が大学に入学したのは1968年で、入学して暫くすると東大闘争で学生がストライキ

に入り、8ヶ月授業のない日が続きました。私はクラスの数人と連れだって生物学の担当

教官であった当時助教授の丸山先生の研究室を訪れ、セミナーをやっていただけないかと

お願いしました。先生は快く引き受けてくださり、駒場3号館の一室に7−8人の同級生

が週1回集まって丸山先生のご指導の下に輪読セミナーが始まりました。丸山先生の生物

学の講義もとても興味を引きつけられるものでしたが、大学1年で体験したこの輪読セミ

ナーでは、先生が選んでくださるScientific Americanの論文を四苦八苦で、しかし実に楽

しく読み進めたことを今でもはっきり思い出すことができます。これがきっかけとなって

私は物理から生物化学へと興味を移し、結局卒業研究は丸山研に配属されました。丸山先

生との出会いが私の将来の方向を決定したのです。その後もいろいろなところでお世話に

なりました。これからもまだお話を伺う機会はいくらでもあるはずだと思いながらご無沙

汰をしていたところ、突然の訃報に接し、ただ呆然とするばかりです。心よりご冥福をお

祈りいたします。